辞めてほしくない人に限って辞めるので、用意しておくこと

神戸の元町、ポートタワーの見える事務所で
弁護士をしています、古谷(ふるたに)です。

 

 

トラブルの発生を予防して

安心して事業、生活が送れるよう

サポートしています。

 

 

経営者、特に創業経営者の方と

話していると、
社員さんに対する強い期待を
感じることがあります。

 

 

自分自身が大きなエネルギーを持って
事業を立ち上げ、広げてきた方ほど、

社員さんにも、同じように考え、
同じように動いてほしい。

 

 

そんな思いを持っておられることが
多いように感じます。

 

 

その中で、よく聞く言葉があります。

「もっと経営者目線で考えてほしい」

というものです。

 

 

経営者は、社員さんから見えないところで、
本当にいろいろなことをしています。

 

 

資金繰りを考え、銀行とのやり取りをし、
取引先との関係を整え、売上の見通しを立て、
人件費や固定費の重さを感じながら、
毎月の経営判断をしています。

 

 

社員さんから見れば、
社長は自由に動いているように
見えるかもしれません。

 

 

でも実際には、
会社を守るために、
常に先のことを考えています。

 

 

だからこそ、社員さんにも

その事情を理解してほしい。

言われたことだけではなく、
言われていないことまで考えて、
主体的に動いてほしい。

 

 

そう思うのは、
経営者として自然な感覚でしょう。

 

 

ただ、現実には、
そこまで経営者目線で考えられる社員さんは、
なかなか多くありません。

 

 

そして、少し皮肉なことですが、
本当にそこまで考えられる社員さんは、
いずれ独立していく可能性も高いのです。

 

 

優秀な人ほど、
自分で考え、判断し、行動できます。

 

 

そうすると、

いつか自分で事業をしてみたい、
自分の力を試してみたい、
と思うこともあります。

 

 

これは、ある意味では仕方のないことです。

優秀な人を引き留めるためには、
その人がここで働き続けたいと思えるだけの
会社の成長や、仕事の魅力が必要になります。

 

 

給与だけではなく、
裁量、やりがい、信頼関係、
将来の見通し。

そういったものを、
会社として用意していく必要があります。

 

 

一方で、どれだけ大切にしていても、
退職を完全に防ぐことはできません。

 

 

問題は、退職そのものではなく、
退職後に会社の顧客情報やノウハウを使って、
すぐ近くで競業されるような場合です。

 

 

そこで考えておきたいのが、
競業避止義務に関する誓約書や、
就業規則の整備です。

 

 

競業避止義務とは、簡単に言えば、
退職後に一定の範囲で
会社と競合する仕事をしない義務のことです。

 

 

ただし、これは何でも自由に
決められるわけではありません。

 

 

退職後の仕事を制限することは、
その人の職業選択の自由にも関わります。

 

 

ですので、
期間、地域、業務内容、対象となる立場、
会社が守ろうとしている利益など、

 

 

内容が広すぎないか、
合理的な範囲にとどまっているかが
大切になります。

 

 

「退職後は一切同業をしてはいけない」
というような広すぎる内容では、
有効性が認められないのです。

 

 

また、実務上大事なのは、
誓約書をもらうタイミングです。

 

 

退職時に誓約書へ署名押印を求めても、
本人が拒否すれば、それ以上進まないこともあります。

 

 

すでに気持ちが退職に向いている段階では、
会社側の求めに応じてもらえないことも
十分あり得ます。

 

 

だからこそ、
採用時や、昇進によって

重要な情報を扱う立場になった時点で、
誓約書を整えておくことが重要です。

 

 

もちろん、書面を作れば
すべて安心というわけではありません。

 

 

でも、何も決めていなければ、
いざというときに会社を守る材料が
少なくなってしまいます。

 

 

社員さんに期待することは大切です。

ただ、期待だけで会社を守ることはできません。

 

 

優秀な人が育つ会社であること。

そして、その人が旅立つ可能性も前提に、
会社の大切な情報や顧客を守る仕組みを作ること。

 

 

人を信じることと、
会社を守る準備をすることは、
決して矛盾しません。

 

 

むしろ、安心して人に任せるためにこそ、
ルールや書面の整備が大切ですね。

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